2007年05月22日
* 騒心 * 猿蟹合戦
* 騒心
卒業だと 云うに
平常心を失った 昨日今日
日常の言動まで 狂って
今日の君は 何だか少し違う
友は気にして 僕の顔を見る
いつもは 心の底深く
澱(おり)と沈んで 平らなものが
今は暴れて 強く騒ぐ
抑え切れずに 身体までもが熱い
人が みな
悪鬼の 顔に見え
善意の言葉をも 猜疑(さいぎ)の耳で聞く
今の自分は きっと
この世で一番 嫌な顔に違いない
それでも この世にも
そんな僕に 対しても
優しい 人が
居ないでも なかろう
せめて それを頼りに
今は口を噤(つぐ)むしか 術がない
* 猿蟹合戦
猿が蟹を 騙したそうだ
自分が熟した 柿を食い
蟹に渋柿 投げつけた
でも柿の実は 一斉に熟す
甘柿渋柿 一緒にはならぬ
本当に猿が 騙したものか
もし僕が 騙されたのなら
石臼などに 相談しない
自分自身の 不明を恥じる
友に不足も 押しつけず
自分のくさぐさ 語るまい
川の流れに ただ託すのみ
応援有難うございます。皆様に読んでいただけら嬉しいです。
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卒業だと 云うに
平常心を失った 昨日今日
日常の言動まで 狂って
今日の君は 何だか少し違う
友は気にして 僕の顔を見る
いつもは 心の底深く
澱(おり)と沈んで 平らなものが
今は暴れて 強く騒ぐ
抑え切れずに 身体までもが熱い
人が みな
悪鬼の 顔に見え
善意の言葉をも 猜疑(さいぎ)の耳で聞く
今の自分は きっと
この世で一番 嫌な顔に違いない
それでも この世にも
そんな僕に 対しても
優しい 人が
居ないでも なかろう
せめて それを頼りに
今は口を噤(つぐ)むしか 術がない
* 猿蟹合戦
猿が蟹を 騙したそうだ
自分が熟した 柿を食い
蟹に渋柿 投げつけた
でも柿の実は 一斉に熟す
甘柿渋柿 一緒にはならぬ
本当に猿が 騙したものか
もし僕が 騙されたのなら
石臼などに 相談しない
自分自身の 不明を恥じる
友に不足も 押しつけず
自分のくさぐさ 語るまい
川の流れに ただ託すのみ
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2007年05月21日
* 囀り(2)
* 囀り(2)
大海原を 飛翔する
大(だい)なる翼も 備え得ず
白鳥の美とも 縁遠し
只管(ひたすら) 人の間近に居て
草の根啄(ついば)み 昆虫を追う
稲穂の実り 窺(うかが)うとしても
案山子(かかし)に怯える 小心翼翼
雀の一生 歓びたるや何
人と雀に 何ほどの差
人に偉業あり とは師の教え
偉人は生涯に 大義を就(な)し
遍(あまね)く 万物の上にあり
ピテカントロプス ペキナンシス
ネアンデルタール クロマニヨン
標本室には 頭蓋(もけい)が並ぶ
進化を続けて ホモサピエンス
今や偉業も 成し遂げる
紀元は 二千六百四年
文字を起こしつ この年月
偉業を伝える 数多(あまた)の記録
遥けき昔 暗黒の宙天に日輪出来(しゅうらい)
すでに半分 燃えしと聞く
残余が 三十五億年
三十五億年に 比するなら
二千年余は 束の間のこと
偉業を伝えたとして 数百年
アレキサンダー 成吉思汗(じんぎすかん)
世界をその手に 征すと云う
昔の偉業を 尋ねしとしても
今なら 誰が讃えよう
偉業を成すも 成さざるも
人は生きて ただなる五十年
雀の短命 いかにして嗤う
日輪と共に すべてが滅ぼす
雀に偉業は 成し得ない
朝日に囀(さえず)り 北風に舞う
囀り唄うが 歓びならば
それならそれで 可(よ)しとすべし
雀は身体を 鍛えない
痩せたる雀は 痩せしまま
肥たる雀は 肥えしまま
痩せた吾が身を 鍛え抜き
生涯の功を 軍人に問うや
心に偉業を 求めぬならば
軍人である 要も無し
偉業と 無縁のままに生き
小さき囀(さえず)り 歓びあらば
吾は 雀のように生きたし
大なる顕彰 墓石も無縁
路傍に死すも それまた可(よ)し
応援有難うございます。
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大海原を 飛翔する
大(だい)なる翼も 備え得ず
白鳥の美とも 縁遠し
只管(ひたすら) 人の間近に居て
草の根啄(ついば)み 昆虫を追う
稲穂の実り 窺(うかが)うとしても
案山子(かかし)に怯える 小心翼翼
雀の一生 歓びたるや何
人と雀に 何ほどの差
人に偉業あり とは師の教え
偉人は生涯に 大義を就(な)し
遍(あまね)く 万物の上にあり
ピテカントロプス ペキナンシス
ネアンデルタール クロマニヨン
標本室には 頭蓋(もけい)が並ぶ
進化を続けて ホモサピエンス
今や偉業も 成し遂げる
紀元は 二千六百四年
文字を起こしつ この年月
偉業を伝える 数多(あまた)の記録
遥けき昔 暗黒の宙天に日輪出来(しゅうらい)
すでに半分 燃えしと聞く
残余が 三十五億年
三十五億年に 比するなら
二千年余は 束の間のこと
偉業を伝えたとして 数百年
アレキサンダー 成吉思汗(じんぎすかん)
世界をその手に 征すと云う
昔の偉業を 尋ねしとしても
今なら 誰が讃えよう
偉業を成すも 成さざるも
人は生きて ただなる五十年
雀の短命 いかにして嗤う
日輪と共に すべてが滅ぼす
雀に偉業は 成し得ない
朝日に囀(さえず)り 北風に舞う
囀り唄うが 歓びならば
それならそれで 可(よ)しとすべし
雀は身体を 鍛えない
痩せたる雀は 痩せしまま
肥たる雀は 肥えしまま
痩せた吾が身を 鍛え抜き
生涯の功を 軍人に問うや
心に偉業を 求めぬならば
軍人である 要も無し
偉業と 無縁のままに生き
小さき囀(さえず)り 歓びあらば
吾は 雀のように生きたし
大なる顕彰 墓石も無縁
路傍に死すも それまた可(よ)し
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2007年05月20日
* 囀り(1)
昭和 十九年
春過ぎて はや晩夏
小学校在校生も 半歳を残し
吾身の行路(ゆくえ)を 師に問われる
「おまえは元来 軟弱の徒
志して 御国の為にこそなれ」
「戦局益々 重大なる折
軍人たれ」との吾が師の言
「小学校より 望むのなら
難度高きとは云え 陸軍幼年学校
もしくは 航空機乗務員養成所
大学に代えての 進路とあらば
陸軍に その士官学校
海軍なれば 兵学校もあり」
幼年学校の 生徒とあらば
歩く姿も 見しことあり
軍装に その身を飾る
将官の 雛
何れ何時かは 将軍となり
我等が兵の 上に立つ
吾は兵たる 体力とて無く
将の智謀あり とも云い難し
手足か細き 脆なる骨格
よしこのまま 成人し得ても
徴兵検査は 丙種不合格
将官たるを 希みしとしても
兵を指揮する 資質あろうや
兵の死も厭わぬ 胆力ありや
体操の時間が 何より苦手
球投げ遊びに 興ずることもなし
「なれば今こそ 身体を鍛えよ
努めて耐えて 鍛え抜け
鍛えて真の 赤子(せきし)たれ」
師の教導に 我は頷く
頷きつつも 考える
ラジオ体操すらも苦手な吾
いったい何おば 如何にする
短期に成果を 挙げ得ようや
川沿いの土手に 雀の屍骸
埃に塗(まみ)れつ 干涸びる
如何なる思いに 死したるものぞ
或る日 卵より生まれ出て
父母なる雀に 餌を貰う
嘴(クチバシ)開けて 親を待ち
やがて自らを 親となす
親は子をなし 子は親となる
暦日が その繰り返し・・・
つづく
ご協力お願いします。
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2007年05月19日
* 爆弾 * 凡庸 * 乙姫
* 爆弾
同級生に誘われて 受験をした
その名は 航空機乗務員養成所
視力が足りずに 僕は落ちた
合格の 友は
卒業したら そこへ行く
航空機乗務員とは 特攻隊員
敵艦を撃沈する技 覚え込む
「志賀君は お国の為に死に希む
幼少にして その責を果たす・・・・・・
卒業を前に 先生の訓話
その目に光る 涙を見て
級友達も つられて泣く
不合格の 僕は
みんなの前で 小さくなった
でも僕達はまだ 国民学校六年生
厳しい 三年間の
修行を 経たとしても
爆弾抱えた 重い飛行機
旨く飛ばすこと できるのだろうか
* 凡庸
子供時代を 無為(むい)に過ごせば
大人になっても 鳴かず飛ばず
賢しらな顔で 或る人は云う
心に理想を 持たぬ子は
死ぬまで何も 為(な)し得ない
でも百千の凡庸があるから
ひとつの尤(ゆうぶつ)が 冴えて光る
皆が将官を 目指したら
戦う兵は 居なくなる
何の為に鳴き 何を望んで飛ぶ
声も張らずに 肩いからせず
凡庸なる人は 静かに生きる
平らかなる心の 儘に居て
鳴かず飛ばずも 良いではないか
* 乙姫
浦島太郎は 夢を見た
遠く海原に 目をやって
もの思ううちに 微睡(まどろ)んだ
華麗な怪しい 海の夢
ふと目覚むれば 傍らに箱
蓋を(ふた)を開けても 何もなし
ただしらじらと 箱の底
浦島太郎は眠くなり
自分を忘れた 長い夢
永らく夢を 見続けて
起きて海面に 顔を写せば
誰しも年令を とってる道理
流れし去りし 泡沫の日々
年令老い死ぬ時 その事を知る
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同級生に誘われて 受験をした
その名は 航空機乗務員養成所
視力が足りずに 僕は落ちた
合格の 友は
卒業したら そこへ行く
航空機乗務員とは 特攻隊員
敵艦を撃沈する技 覚え込む
「志賀君は お国の為に死に希む
幼少にして その責を果たす・・・・・・
卒業を前に 先生の訓話
その目に光る 涙を見て
級友達も つられて泣く
不合格の 僕は
みんなの前で 小さくなった
でも僕達はまだ 国民学校六年生
厳しい 三年間の
修行を 経たとしても
爆弾抱えた 重い飛行機
旨く飛ばすこと できるのだろうか
* 凡庸
子供時代を 無為(むい)に過ごせば
大人になっても 鳴かず飛ばず
賢しらな顔で 或る人は云う
心に理想を 持たぬ子は
死ぬまで何も 為(な)し得ない
でも百千の凡庸があるから
ひとつの尤(ゆうぶつ)が 冴えて光る
皆が将官を 目指したら
戦う兵は 居なくなる
何の為に鳴き 何を望んで飛ぶ
声も張らずに 肩いからせず
凡庸なる人は 静かに生きる
平らかなる心の 儘に居て
鳴かず飛ばずも 良いではないか
* 乙姫
浦島太郎は 夢を見た
遠く海原に 目をやって
もの思ううちに 微睡(まどろ)んだ
華麗な怪しい 海の夢
ふと目覚むれば 傍らに箱
蓋を(ふた)を開けても 何もなし
ただしらじらと 箱の底
浦島太郎は眠くなり
自分を忘れた 長い夢
永らく夢を 見続けて
起きて海面に 顔を写せば
誰しも年令を とってる道理
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2007年05月18日
* 人生 * 刻
* 人生
電車を走らせるのは 運転員
バスを走らせるのは 運転手
電車は 軌道を走るから
運転員の仕事は 発信と停止
運転手はその上に 舵をとる
乗り物違いで 方式も異なる
学校だって 似たようなもの
定められし軌道を走れば 進学
自分で進路を探れば 独学
バスにも 自家用があり
乗り合いがある
人の進路にも いろいろの事情
わが友は 多くの親族(ひと)の期待を担う
期待を背負うも 運命(さだめ)なら
荷は軽いほうが 気も楽であろう
その点 われに何の期待もなし
いや そうでもないかなあ
「おまえは 将来偉くなる 頑張れ」
叔父の一人は いつかそう云った
刻々(ときどき)は 誰かがそんな事を云う
本当にそんな期待など 持っているのか
束の間の励ましが 入れ替わり
小さな期待が 刻(とき)と共に代わるだけなら
乗客が入れ変わる タクシーと同じ
おためごかしの 期待なら
初めから 背負いはすまい
何も背負わぬ人生なら 単車(オートバイ)の操縦
道なき 道を
独りで 探るも悪くはあるまい
先生に そう告げたら
あきれ果てた顔で 僕を見た
* 刻
刻(とき)の流れに 逆らいて
今日を昨日に 留め置く
明日に何をば 希(のぞ)めるものか
卒業をして 何とする
子供の心の 儘(まま)に居て
他人の裏腹 探ること無く
風や花鳥(かちょう)と 語らいたい
無いもの強請りの 空頼み
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バスを走らせるのは 運転手
電車は 軌道を走るから
運転員の仕事は 発信と停止
運転手はその上に 舵をとる
乗り物違いで 方式も異なる
学校だって 似たようなもの
定められし軌道を走れば 進学
自分で進路を探れば 独学
バスにも 自家用があり
乗り合いがある
人の進路にも いろいろの事情
わが友は 多くの親族(ひと)の期待を担う
期待を背負うも 運命(さだめ)なら
荷は軽いほうが 気も楽であろう
その点 われに何の期待もなし
いや そうでもないかなあ
「おまえは 将来偉くなる 頑張れ」
叔父の一人は いつかそう云った
刻々(ときどき)は 誰かがそんな事を云う
本当にそんな期待など 持っているのか
束の間の励ましが 入れ替わり
小さな期待が 刻(とき)と共に代わるだけなら
乗客が入れ変わる タクシーと同じ
おためごかしの 期待なら
初めから 背負いはすまい
何も背負わぬ人生なら 単車(オートバイ)の操縦
道なき 道を
独りで 探るも悪くはあるまい
先生に そう告げたら
あきれ果てた顔で 僕を見た
* 刻
刻(とき)の流れに 逆らいて
今日を昨日に 留め置く
明日に何をば 希(のぞ)めるものか
卒業をして 何とする
子供の心の 儘(まま)に居て
他人の裏腹 探ること無く
風や花鳥(かちょう)と 語らいたい
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2007年05月17日
* 叱責 * 訛り * 女先生
* 叱責
兎に角お前は ひねこび過ぎる
年令(とし)相応に 子供らしくあれ
余計な事は 考えるで無い
どうして大人の 心まで探る
鉄棒に下がり 球を追え
お前を見てると 気持ちが悪い
上目使いに 相手を見るな
真っ直顔を 上げて話せ
大きな声で はきと答えよ
持って回った 考えは捨てよ
こまごま書く事も もう止めろ
学校で教えただけの 漢字を使え
何故に大人の 雑誌など読む
お前に色恋まで 解るのか
子供の情操(こころ)から 逸脱するな
僕は確かに 内も外も子供です
もし級友と何かが 違うとしたら
ひとの言葉を 鵜呑みにしないだけ
* 訛り
友はみな 郷里(くに)の言葉を話し合う
何ばしたとね どぎゃんしとっと
でも僕の言葉の 半分ほどは
今まで読んだ 本の中の言葉
気取らんほうが 良かっちゃなかと
親しい友は そう云ってくれた
己れを飾る積もりは なけれど
気付かぬ 内に
そんな風に なっていた
嫌いな人と 同じ言葉は使うまい
僻(ひが)みが その事の原因か
自在に話し合う 級友達の前で
僕は只管(ひたすら) 無口をとおす
* 女先生
担任でも ないのに
どう云う 訳か
僕の顔を 見ると
微笑みながら 頷いてくれる
今日も 廊下で
話かけ られた
とても嬉しい ことなのに
僕には 咄嗟に
返事が できない
「そんな怖い目 しないのよ」
笑いながら 先生は
そう云った
兎に角お前は ひねこび過ぎる
年令(とし)相応に 子供らしくあれ
余計な事は 考えるで無い
どうして大人の 心まで探る
鉄棒に下がり 球を追え
お前を見てると 気持ちが悪い
上目使いに 相手を見るな
真っ直顔を 上げて話せ
大きな声で はきと答えよ
持って回った 考えは捨てよ
こまごま書く事も もう止めろ
学校で教えただけの 漢字を使え
何故に大人の 雑誌など読む
お前に色恋まで 解るのか
子供の情操(こころ)から 逸脱するな
僕は確かに 内も外も子供です
もし級友と何かが 違うとしたら
ひとの言葉を 鵜呑みにしないだけ
* 訛り
友はみな 郷里(くに)の言葉を話し合う
何ばしたとね どぎゃんしとっと
でも僕の言葉の 半分ほどは
今まで読んだ 本の中の言葉
気取らんほうが 良かっちゃなかと
親しい友は そう云ってくれた
己れを飾る積もりは なけれど
気付かぬ 内に
そんな風に なっていた
嫌いな人と 同じ言葉は使うまい
僻(ひが)みが その事の原因か
自在に話し合う 級友達の前で
僕は只管(ひたすら) 無口をとおす
* 女先生
担任でも ないのに
どう云う 訳か
僕の顔を 見ると
微笑みながら 頷いてくれる
今日も 廊下で
話かけ られた
とても嬉しい ことなのに
僕には 咄嗟に
返事が できない
「そんな怖い目 しないのよ」
笑いながら 先生は
そう云った
2007年05月16日
* 式日 * 配給
* 式日
校長先生は 漆黒の礼服
壇上の机には 光る塗り箱
奉安殿より 移し来るもの
まず恭々しく 箱に一礼
白手袋が 紐を解く
厳かに 箱の蓋を外し
内から取り出す 巻物一巻
左右に拡げて 勅語の朗読
頭を下げて 唱和せよ
式日毎の 繰り返し
もう記憶(そら)で 僕等は云える
もしも忘れて 不可(いけ)ないものなら
何処かに大きく 張り出せば良い
僕には大きな 声など出せぬ
皆で校歌を 歌うのも苦手
口だけ大きく ぱくぱく開けて
何時も唱える 振りをする
* 配給
今日学校で 布靴(ズック)の配給
五十人の学級に たったの5足
籤に外れた 足の悪い友は
「僕には下駄が 履けないのに」と
皆の前で 泣いた
五足の布靴しか 無いのなら
数が揃うまで 待てば良い
そしたら全員に 遍く渡る
誰の気持ちも すっきりしよう
放課後 先生に進言した
「お前は そう云うけどな
この次の 配給など
もう 無いかも知れぬ
誰も足に 合わなくなる
余計な 心配などするな」
叱りながら 先生も
哀しそうな 顔をした
校長先生は 漆黒の礼服
壇上の机には 光る塗り箱
奉安殿より 移し来るもの
まず恭々しく 箱に一礼
白手袋が 紐を解く
厳かに 箱の蓋を外し
内から取り出す 巻物一巻
左右に拡げて 勅語の朗読
頭を下げて 唱和せよ
式日毎の 繰り返し
もう記憶(そら)で 僕等は云える
もしも忘れて 不可(いけ)ないものなら
何処かに大きく 張り出せば良い
僕には大きな 声など出せぬ
皆で校歌を 歌うのも苦手
口だけ大きく ぱくぱく開けて
何時も唱える 振りをする
* 配給
今日学校で 布靴(ズック)の配給
五十人の学級に たったの5足
籤に外れた 足の悪い友は
「僕には下駄が 履けないのに」と
皆の前で 泣いた
五足の布靴しか 無いのなら
数が揃うまで 待てば良い
そしたら全員に 遍く渡る
誰の気持ちも すっきりしよう
放課後 先生に進言した
「お前は そう云うけどな
この次の 配給など
もう 無いかも知れぬ
誰も足に 合わなくなる
余計な 心配などするな」
叱りながら 先生も
哀しそうな 顔をした
2007年05月15日
* 雨水
* 雨水
雨水を 飲めば
美味しいだろうか と友は問う
元はと 云えば
海陸から 立ち昇った
蒸留水の ようなもの
飲んで呑めない 筈は無い
きっと旨いと 僕は思うよ
降る夕立を 容器に受けて
友と分け合い 呑んでみた
生温さは 兎も角として
あまり 美味しいとはお世辞にも 云えぬ
どうしてだろうね わが友は
小首を 傾げる
雨水しか 飲み水が得られぬ
そんな 島が
何処かに存る 何時か聞いた
多分そこは 静かで広い海の中
奇麗な 海の水が
そのまま 蒸発して
そして透明な 雨水となる
この広い 社会に生きる
人間達の 姿様々
良い人も いれば
汚辱に塗(まみ)れる 人達もいる
悪(あ)しき 人々の
臓腑から 瘴気(しょうき)が立ち昇り
清潔で あるはずの
雨水の粒々と 混ざり合う
それが この味の原因だろう
と 僕は云った
ほんの 他愛も無い
冗談のつもり だったのに
「そうだと したら
僕等は どちらの人間だろうね」
友は 真面目な顔で そう問うた
でも僕等は まだ子供
色分けするには 早いのではないか
雨水を 飲めば
美味しいだろうか と友は問う
元はと 云えば
海陸から 立ち昇った
蒸留水の ようなもの
飲んで呑めない 筈は無い
きっと旨いと 僕は思うよ
降る夕立を 容器に受けて
友と分け合い 呑んでみた
生温さは 兎も角として
あまり 美味しいとはお世辞にも 云えぬ
どうしてだろうね わが友は
小首を 傾げる
雨水しか 飲み水が得られぬ
そんな 島が
何処かに存る 何時か聞いた
多分そこは 静かで広い海の中
奇麗な 海の水が
そのまま 蒸発して
そして透明な 雨水となる
この広い 社会に生きる
人間達の 姿様々
良い人も いれば
汚辱に塗(まみ)れる 人達もいる
悪(あ)しき 人々の
臓腑から 瘴気(しょうき)が立ち昇り
清潔で あるはずの
雨水の粒々と 混ざり合う
それが この味の原因だろう
と 僕は云った
ほんの 他愛も無い
冗談のつもり だったのに
「そうだと したら
僕等は どちらの人間だろうね」
友は 真面目な顔で そう問うた
でも僕等は まだ子供
色分けするには 早いのではないか
2007年05月14日
* 言い訳 * 濁流
* 言い訳
皆が喜び はしゃぐのに
お前だけが 何時も冷静
喜怒哀楽が 顔に出ぬ
どうして心 浮かぬのか
皆は球追い 嬉々として遊ぶ
お前はそれを 見てるだけ
精一杯に 飛び跳ねよ
今は体を 作る時期
何時も小声で 言い訳するな
大きな声で はいと云え
汗を流して 皆と動いて
声張り上げて 何故歌わぬ
図書館では 本はよりどり
文字を連ね 絵も描きます
独りでいても 自然が友
それが僕の歓びなのです
* 濁流
増水の白河で 友と泳いだ
濁流は 雨の川面にうねって
流れる倒木は 逆巻く渦に踊る
大甲橋の欄干から 飛び込んで
しぶきに噎(む)せつつ 泥水を吐く
奔流のうねりに 友の姿見失い
過ぎる橋々の桁を 間近に仰ぐ
いっそ海まで 流されてみたい
それでも 手近の岸に泳ぎ着き
ずぶ濡れの帰路は 遠かった
皆が喜び はしゃぐのに
お前だけが 何時も冷静
喜怒哀楽が 顔に出ぬ
どうして心 浮かぬのか
皆は球追い 嬉々として遊ぶ
お前はそれを 見てるだけ
精一杯に 飛び跳ねよ
今は体を 作る時期
何時も小声で 言い訳するな
大きな声で はいと云え
汗を流して 皆と動いて
声張り上げて 何故歌わぬ
図書館では 本はよりどり
文字を連ね 絵も描きます
独りでいても 自然が友
それが僕の歓びなのです
* 濁流
増水の白河で 友と泳いだ
濁流は 雨の川面にうねって
流れる倒木は 逆巻く渦に踊る
大甲橋の欄干から 飛び込んで
しぶきに噎(む)せつつ 泥水を吐く
奔流のうねりに 友の姿見失い
過ぎる橋々の桁を 間近に仰ぐ
いっそ海まで 流されてみたい
それでも 手近の岸に泳ぎ着き
ずぶ濡れの帰路は 遠かった
2007年05月13日
* 人間万事 * 宿題
* 人間万時
同じ過ち 二度繰り返す
利口とは云えぬ 師の言葉
でも諺にも あるだろう
人間万時 七転び八起き
次を期すれば 良いと思う
打ちひしがれて 我は迷う
弾む明日など あるのだろうか
ああこんな時に 云うだろう
人間万時 塞翁が馬
また良き事も あるだろう
何時も 仕合わせそうな友
心配事など あるのだろうか
禍福は糾(あざな)える 縄の如し
われは禍のみに 糾えし縄
人間万時 生まれついての運不運
* 宿題
ちじかむ 指先
えいやと 伸ばし
願わくば
この宿題 早く仕上げむ
眠たき 眼
かっ と見瞠(みひら)き
神よ 早々と
終わらせ給え
同じ過ち 二度繰り返す
利口とは云えぬ 師の言葉
でも諺にも あるだろう
人間万時 七転び八起き
次を期すれば 良いと思う
打ちひしがれて 我は迷う
弾む明日など あるのだろうか
ああこんな時に 云うだろう
人間万時 塞翁が馬
また良き事も あるだろう
何時も 仕合わせそうな友
心配事など あるのだろうか
禍福は糾(あざな)える 縄の如し
われは禍のみに 糾えし縄
人間万時 生まれついての運不運
* 宿題
ちじかむ 指先
えいやと 伸ばし
願わくば
この宿題 早く仕上げむ
眠たき 眼
かっ と見瞠(みひら)き
神よ 早々と
終わらせ給え
2007年05月09日
* 教室 * 教え
* 教室
掃除が終われば 皆は帰る
僕は居残り 頁(ぺいじ)を拡げる
人の気配が 失せた教室
ふと気が付けば 迫る夕闇
五十席の 机の面(おもて)
薄暮の中に しろじろ光る
墓地に並んだ墓石にも似て
ふと襲い来る 何がなしの寂しさ
柳の下に いつも独りで
幽霊も こんな気持ちで
じっと墓場に 居るのだろうか
* 教え
質問があれば 何でも問え
解らぬ事を その儘にするな
先生は何時も そう云われる
でもそれは 授業だけの事
学業以外の いろいろの話
尋ねたい事 山程あるけれど
素直に僕は 声が出ぬ
「どうしてですか 何故ですか」
胸に仕舞いて 口噤む
掃除が終われば 皆は帰る
僕は居残り 頁(ぺいじ)を拡げる
人の気配が 失せた教室
ふと気が付けば 迫る夕闇
五十席の 机の面(おもて)
薄暮の中に しろじろ光る
墓地に並んだ墓石にも似て
ふと襲い来る 何がなしの寂しさ
柳の下に いつも独りで
幽霊も こんな気持ちで
じっと墓場に 居るのだろうか
* 教え
質問があれば 何でも問え
解らぬ事を その儘にするな
先生は何時も そう云われる
でもそれは 授業だけの事
学業以外の いろいろの話
尋ねたい事 山程あるけれど
素直に僕は 声が出ぬ
「どうしてですか 何故ですか」
胸に仕舞いて 口噤む

